「オオカミくんのホットケーキ」ジャン・フィアンリー作 まつかわまゆみ訳 評論社 2002年

オオカミくんのホットケーキ
ジャン・フィアンリーさく / まつかわ まゆみやく
評論社 (2002.3)
通常2-3日以内に発送します。


「ある日、おなかがすいたオオカミくんは、ふと
ホットケーキが、食べたくなりました。」
字を読んだり買い物や料理が苦手なオオカミくんは、
ご近所に助けてもらえないかと、礼儀正しくお願いします。
ご近所に住んでいるのは、
ブレーメンの音楽隊を引退したオンドリさんや、
赤頭巾ちゃん、三匹のこぶたたちなど、おとぎ話でお馴染の面々。


ところが、このご近所さんたちときたら、みんな意地の悪い顔をして、
「やなこった」「とっととうせろ」なんて、
乱暴な言葉でオオカミくんを追い返し、誰も手伝ってくれません。
かわいそうなオオカミくんは、仕方なく
一人で苦労してホットケーキを作りました。
ホットケーキのいい匂いを嗅ぎつけたご近所さんたち、
誰も手伝ってくれなかったのに、
「ホットケーキをよこせ」と押しかけました。
オオカミくんは、ため息をついて・・・


おとぎ話ではたいてい悪役のオオカミですが、
この話では「ご近所さん」のほうが意地悪。
おとぎ話とは逆の、気のいいオオカミの話なのかと思いきや、
なんと、最後に大どんでん返しが待っています。


え? いいの? 
絵本なのに、そんなオチでいいの?


思わず戸惑う自分を振り返り、
「絵本はこういう話でなくちゃ」という自分の思い込みに気づかされました。
そういう「枠」からは結構自由なつもりだったのに、
いつの間にか無意識に良識的な結末を期待していた自分を発見。
たまにこういう絵本を読むと、
自分の頭がいかに固くなっているのがわかります。


小さな子はびっくりするかもしれません。小学校中学年くらいから。
常識をひっくり返すブラック・ユーモアを楽しめるかは、年齢や、好みによっても違うと思いますが、
大人の「お説教」や「偽善」に敏感になる高学年の子どもは喜びそう。