Vol.21 絵本「おにいちゃんにははちみつケーキ」

おにいちゃんにははちみつケーキ
ジル・ローベルぶん / セバスチャン・ブラウンえ / なかがわ ちひろやく
主婦の友社 (2006.5)
通常24時間以内に発送します。

きつねのコンタの家に赤ちゃんが生まれました。
コンタのベッドはとられるし、
お部屋で大きな音を出すと怒られます。
ママは赤ちゃんにつきっきり。
コンタの話を聞いてくれません。
赤ちゃんなんて泣いて臭いだけなのに、
ママはコンタより赤ちゃんのほうが好きなのかな。
もうコンタはいらないのかな。
コンタは悲しくなって物置に閉じこもってしまいました。
でもやがて甘〜い匂いがしてきて、
ママが迎えに来てくれました。


コンタの気持ちが切なくて、
ママの愛情が温かくて、思わず涙が出ました。
小さなお兄ちゃんお姉ちゃんにぜひ読んであげてください。

Vol.20 絵本「ちびゴリラのちびちび」

明けましておめでとうございます。
ほぼ1年ぶりの更新、というていたらく。
今年はせめて月に1〜2回の更新をめざしたいと思います。
どうぞよろしくおつきあいくださいませ。


さて、2007年最初のご紹介は、ロングセラーの名作絵本です。

ちびゴリラのちびちび
ルース・ボーンスタインさく / いわた みみやく
ほるぷ出版 (1978.8)
通常24時間以内に発送します。


ちいさなかわいいゴリラのちびちび。
おかあさんも、おとうさんも、家族もみんなちびちびが好き。
キリンやぞうも、恐ろしいヘビやライオンも、
みんながちびちびが好きで、優しくしてくれます。
ああ、なんてかわいいちびちび。
そして、ちびちびと一緒にいられる幸せ!
これって、どこの赤ちゃんも同じですよね。
赤ちゃんって、そこにいるだけでまわりを幸せにしてしまう。


ところがそのうち、ちびちびは大きくなり始めました。
どんどん大きくなって、もう「ちいさなかわいい」ちびちびではありません。
そんな大きいゴリラのちびちびのところへ、
森のみんなが誕生日のお祝いに来てくれました。


小さくたって、大きくたって、どんなちびちびでもいいんだよ。
みんなちびちびが大好きなんだから!
そんな森のみんなの声が聞こえてきそう。


子どもを愛する気持ちって、もともと無条件なものだと思います。
無条件の愛に包まれて、子どもは安心して育つことができます。
いくつになったから、これができなくちゃ、とか、
もう大きいから、これじゃダメだとか、
いろいろ心配はあるけれど、それはぐっと飲み込んで、
びちびちのように愛してあげられるといいな。
ちびちびのように愛してもらいたいな。

「オオカミくんのホットケーキ」ジャン・フィアンリー作 まつかわまゆみ訳 評論社 2002年

オオカミくんのホットケーキ
ジャン・フィアンリーさく / まつかわ まゆみやく
評論社 (2002.3)
通常2-3日以内に発送します。


「ある日、おなかがすいたオオカミくんは、ふと
ホットケーキが、食べたくなりました。」
字を読んだり買い物や料理が苦手なオオカミくんは、
ご近所に助けてもらえないかと、礼儀正しくお願いします。
ご近所に住んでいるのは、
ブレーメンの音楽隊を引退したオンドリさんや、
赤頭巾ちゃん、三匹のこぶたたちなど、おとぎ話でお馴染の面々。


ところが、このご近所さんたちときたら、みんな意地の悪い顔をして、
「やなこった」「とっととうせろ」なんて、
乱暴な言葉でオオカミくんを追い返し、誰も手伝ってくれません。
かわいそうなオオカミくんは、仕方なく
一人で苦労してホットケーキを作りました。
ホットケーキのいい匂いを嗅ぎつけたご近所さんたち、
誰も手伝ってくれなかったのに、
「ホットケーキをよこせ」と押しかけました。
オオカミくんは、ため息をついて・・・


おとぎ話ではたいてい悪役のオオカミですが、
この話では「ご近所さん」のほうが意地悪。
おとぎ話とは逆の、気のいいオオカミの話なのかと思いきや、
なんと、最後に大どんでん返しが待っています。


え? いいの? 
絵本なのに、そんなオチでいいの?


思わず戸惑う自分を振り返り、
「絵本はこういう話でなくちゃ」という自分の思い込みに気づかされました。
そういう「枠」からは結構自由なつもりだったのに、
いつの間にか無意識に良識的な結末を期待していた自分を発見。
たまにこういう絵本を読むと、
自分の頭がいかに固くなっているのがわかります。


小さな子はびっくりするかもしれません。小学校中学年くらいから。
常識をひっくり返すブラック・ユーモアを楽しめるかは、年齢や、好みによっても違うと思いますが、
大人の「お説教」や「偽善」に敏感になる高学年の子どもは喜びそう。

「ヘチとかいぶつ」チョン・ハンフ文 ハン・ビョンホ絵 おおたけきよみ訳

ヘチとかいぶつ
チョン ハソプ文 / ハン ビョンホ絵 / おおたけ きよみ訳
アートン (2004.5)
通常24時間以内に発送します。


へー、韓国の絵本なんだ、どんなかな? と思って表紙を開きいたところ、
そこに描かれていた4匹の「かいぶつ」のあまりのラブリーさに一目ぼれ。
(イマドキ風に言えば、「萌え〜」という感じでしょうか?)


「ヘチ」というのは、韓国の伝説の動物で、
太陽の使者、正邪の審判者、正義を守る者、火を防ぐ神でもあるそうです。
その姿は山羊や獅子に似ており頭に一本の角があります。
日本の狛犬や、獅子舞のお獅子や、
そうそう沖縄のシーサーにも似ているように思えます。


絵本では、地上に災いをもたらす怪物四兄弟が、
太陽の神ヘチに一泡吹かせてやろうと思って、
逆に懲らしめられる、というお話が描かれます。
絵がとても楽しく魅力的です。
カラフルでユーモラスな四兄弟は、
とても『地のそこのくに』に住む『おそろしい かいぶつたち』には見えず、
愛嬌たっぷり。
子どもと一緒に、お隣の国の昔話が楽しめます。

「ブライディさんのシャベル」レスリー・コナー文 メアリー・アゼアリアン絵 千葉茂樹訳 BL出版          

ブライディさんのシャベル
レスリー・コナー文 / メアリー・アゼアリアン絵 / 千葉 茂樹訳
BL出版 (2005.8)
通常24時間以内に発送します。


『それは1856年のことでした。新天地へ旅立つブライディさんは、
チャイムの鳴る時計でも、陶器の人形でもなく、一本のシャベルをえらびました。』


開拓時代のアメリカに生きた、一人の若い女性の一代記です。
堅実で働き者のブライディさんは、一本のシャベルと海を渡りました。
ブライディさんの人生は、自然の猛威や不運に見舞われながらも、
それにくじけず、ささやかな幸せを積み上げて、穏やかな老後を迎えます。


その時々のエピソードにはいつもシャベルが登場します。
シャベルはブライディさんの人生の名脇役、いわば戦友のようなもの。
物語はそっけないくらいに淡々と語られますが、
読み進めるうちに胸の内がじんとしてきます。
人生の価値とは、お金持ちになることでも、有名になることでもなく、
真面目に働きまっとうに生きること。
現代のわたし達が見失ってしまった当たり前のことを、この本は静かに教えてくれます。
版画の絵も、この力強い物語に相応しく印象的です。黒い線でくっきりと縁取られ、
きれいな落ち着いた色調で、ブライディさんの人生が丁寧に描かれています。


子どもには難しいでしょうか? 
子どもは、本当に大切なことは本能で嗅ぎ分ける力を持っていると思います。
だからこそ時には、親も一緒に味わう気持ちで、
こんな絵本をお子さんに読んであげてください。
 

「よるくまクリスマスのまえのよる」 酒井駒子作 白泉社

よるくまクリスマスのまえのよる
酒井 駒子著
白泉社 (2000.10)
通常24時間以内に発送します。


 なんと、10ヶ月ぶりの更新です。「継続」の難しさ、自分の力不足を痛感しております。三歩進んで二歩下がりながらも、少しずつ進んでいきたいと思います。改めまして、どうぞよろしくお願いします。


 さて、この本は、読んでもらう子どもより先に、読んであげる親の方が好きになる絵本かもしれません。子どもにはサンタさんが来てくれるクリスマスだから、大人にはせめて絵本をご紹介。


 クリスマスのまえの夜、「ぼく」のところに友達の「よるくま」がやってきます。サンタさんを知らない、というよるくまに、「ぼくがサンタさんしてあげる」と言って優しくしてあげるぼく。なんていい子なんでしょ。小さい子に優しくしてあげれるのは、自分がしっかり愛されているから。よるくまとの冒険の後、ぼくは大好きなお母さんのところへ帰って行きます。


 よるくまやぼくが安心してほこほこと愛されている様子を見るとほっとします。と同時に、大人のわたしも時にはこんなふうに無条件で「よしよし」してもらいたいなあ、と思うのです。子育てって、楽しいこともたくさんあって大変なこともたくさんあって、総合的にはとても素敵な体験だと思いますが、疲れて元気のない時は結構しんどい。ママだって泣きたい時もある。よしよしして欲しい時もある。けれども総じて日本の夫族は「家族の中で一番おっきな息子」だったりして、「よしよし」能力はあまりあてになりません。


 なんて言っていてもしかたないので、「わたしもよしよしして欲しいの」とダーリンに上手に伝えて動かすスキルあれこれを磨きましょう。愚痴をこぼし合ったり元気を分け合ったりできる友達を作りましょう。そうこうしているうちに、小さくて手がかかって守ってあげなくてはならない存在のはずだった我が子が、「ママ、いいコいいコ」と頭をなでなでしてくれるように! 子どもって愛の達人ですね。


 夜も更けて参りました。楽しいクリスマスと良いお年を! 

第三集「こんにちはむし」「こんにちはねこ」「こんにちはいぬ」

じんぺいは家の外へ飛び出します。
ありやくもやてんとうむしに話しかけ、
      (『「こんにちは あり」おれ しっぽ ふる。
       「こんにちは いぬ」あいつ あたま ふる。』
猫を観察して自分を振り返り、
      (『あいつ ときどき きから おりられない。
        おれ はじめから のぼらない。』)
散歩の途中では様々な犬とその飼い主に出会い、
最後にはゆうたにこう言います。
      (『ゆうた ひとの いうこと なんか きにするな。
        おれは おれだ。』
なんて堂々として、かっこいいんでしょう!


このシリーズがよく考えられているなあ、と思うのは、
描かれる内容、絵につけられる文、色使いなどが、
第一集、第二集、第三集と、だんだん複雑になっている点です。


「いばりいぬ」は、よく、読み聞かせの「おまけ」として読みました。
少し長めの絵本を1冊読んだ後、
残り時間では普通の絵本をもう1冊読めないけど、
1冊だけじゃ寂しいかな、というときに重宝しました。
「静かに聞いてくれたから、これはオマケね」と言ってこの本を取り出すと、
子どもたちは大喜び。
次には「今日はオマケはないの」と催促されるほどでした。
もちろん、家では人気の「定番絵本」で、繰り返し読まされましたが、
絵がかわいく、文もシンプルなので、読むほうも楽しかったです。


DATA.2,3才から大人まで。読み時間は1冊3分〜5分くらい。